空閑俊憲の日記

PurpleTaraPress © Toshinori Kuga,2008-2014

夢の時間はつづく


11月11日午後3時過ぎに成田を発ち、ニューヨーク時間同日の午後1時過ぎにJFKに到着。実際には10数時間費やしたのに地球時間の決まりではマイナス数時間の速さでニューヨークに着いたことになる。時の景品をいただいてなんだか得をしたような気にもなるが、飛行時間の疲れは残る。
 日本時間11月10日にニューヨークに住む親しい友人、アンジェラからニューヨーク時間11月12日開催の個展の案内を受けとっていたので、ニューヨーク到着翌日にイーストヴィレッジにある画廊へ行くことにした。午前中にアンジェラに電話し3時頃に彼女がやってくると知らされていたけれど、その前に運転免許証更新のためバッテリーパーク近くでその手続きを済ませ、ついでにウォール街のそばにある懐かしいジョン・ダウンのチョコレイト工場に立ち寄ると、電話もしなかったのにガラスのドアの向こうにかれが現われた。歓喜のあまり抱擁。相変わらずチョコレイトのようにスウィートな男だ。事務所に入ると、チベット衣装を着た私の写真がいつの間にか壁に貼られていた。ニューヨークでは私はチベット音楽のトシらしい。到着日にスーツケースを転がしながらブロードウェイとプリンスの信号まで来たときも、誰か女性の声が「タシデレ」と横のほうから聴こえた。見覚えのあるチベット人。そばにいるご主人も私を見てにっこり微笑んでいる。私はチベタンミュージシャンらしい。

 時間は東京からニューヨークへとひとつの場所に立ち止まらずに夢のように流れている。気候はほとんど東京と同じ。ただ真っ青に雲ひとつなく晴れた空がアメリカらしい。陽射しがまぶしくサングラスが必要だ。今回の旅は機内の窓側ですこし睡眠し、大勢の中国人乗客に囲まれた奇妙な雰囲気のなかで静かにしていた。三つの席のうち中が空いて通路側に若い中国人男性が座っていた。前は3人とも中国人。その隣や斜めの中央座席も中国人で埋まっていた。皆仲間らしい。あるとき私の隣の男が真ん中の席のテーブルを引き出し、オレンジジュースの入ったカップを置いた。自分のテーブルには私と同じ食事が載っていたが、整頓しないままもうひとつのテーブルを使い始めた。そのとき私は尖閣諸島の事件を思い出していた。私が立ち上がって通路へ出ようとすれば、当然すべてのテーブルは折り畳まれることになるだろう。
 案の定アンジェラはいつものようにかなり遅れて画廊に現われた。6時頃だった。私は5時前に着き、盲目の画廊主人、スティーヴンとスーザンという詩を朗読している女性とYukoさんという詩を書いている長崎出身の女性に初対面し、アンジェラが早く来てくれればよいのにと皆といっしょに待った。

 廊下の階段を誰かとお喋りしながら上ってくるアンジェラの声がした。親友のロ−ダ(この人は荒川修作の未亡人、マデリン・ギンズの親友でもある)と娘のフランチェスカといっしょに主人公が登場。一年ぶりに再会、元気そうだった。作品はすばらしかった。最後になってしまったが、個展のタイトルは<SPIRITS in the MATERIAL WORLD>。

写真上: アンジェラの家族、左からアンジェラ、グレン、フランチェスカ、私、ビル。
写真中、下: アンジェラの版画。下の画面の白く反射している部分は室内の照明。