空閑俊憲の日記

PurpleTaraPress © Toshinori Kuga,2008-2014

『星の手記』空閑俊憲


星の光から今古代の奇跡が甦る
善悪劇の終局悪神が善神にひれふす
神様はたった今魚釣りから戻って来た
歪んで見えた真実は鏡の中でまっすぐに見える
掌のなかの割れた水晶の欠片
丸みを帯びて光る八つの言葉たち
万物創造の夢よ、星の手記の表紙を飾れ


彼女と膝を交え額を合わせ両手を結んで
誓ったオレンジ畑の恋は
燃える巨鳥となって飛び立つ
愛欲の園へ捩れた彼女の肢体を運ぶ
縮れた黒髪に真珠の涙を装飾する
フェルメールの女紅い帽子は微笑する
飛翔する解けた鈴の組紐を愛する人への贈物に
ぼくはきみの膝にとまった蝸牛の宮殿へ招かれる
不思議な音楽が薮を走り抜ける白蛇の
見えぬ手足によって生まれた
輝く子は無花果の木の下に座り
永久に笑みを浮かべて疲れたきみを待っているだろう
口を開けきみを飲み込むだろう
時間は風となり束となり
プラネタリウムの水晶の館に音もなく吹き渡る
百年かけて歩いても子の体内に果てもなく
歩きそして歩きつづけるだろう
インドの経典曰く、一陣の風が再び巻き起こり
きみは同じ子の微笑する口から吐き出され
疲れが癒されたのを知るだろう


この部屋は電車のように走っていたのですね
窓から見える風景も鳥もぼくたちの紅潮する頬のように熱い炎に包まれている
雪をせがんだ妹よ、きみはひとりじゃない
薔薇の薫りのするソファーで
きみは全裸になる
蕾のように閉じた素肌を開く
心臓の鼓動は闇の暴風雨に負けず鮮明に響き渡る
胎児は生きていた生きている
ぼくたちは命に感謝し祝福するだろう
ぼくたちは生きていた生きている
彼女の瞳に秘められたルビーは愛欲の時刻を示す
獲物を襲う彪のように身体をくねらせて
ぼくはきみを抱くだろう
ぼくはきみに抱かれるだろう
三つの夢の水路を流れる水は流れ方を変えてもなお同じひとつの水命の水である
ぼくはきみの背中に接吻するだろう
きみを覆っていた孤独の影に終止符を打つために
もうやめた! 
毎日歯をギラギラに磨くのはもうやめた
鰐と太陽との朝の会話である
好奇心は太陽ほど信用できない
至高の夢はそこに転がっている
暗い宝石のように煌めいている
きみの瞳のなかの星